導入事例 石炭海上輸送の配船計画最適化
単純作業を減らし、
最適な配船計画の検討に集中できる環境へ。

社外に頼れる存在が居ることは、私たちの強み。
単純作業を減らし、最適な配船計画の検討に集中できる環境へ。
社外に頼れる存在が居ることは、私たちの強み。
北陸電力株式会社

Story

北陸電力株式会社

北陸地方に根差したインフラ企業として、地域の暮らしを支えてきた北陸電力。同社では発電量の約4割を石炭火力発電が占めており、年間約80隻もの船で重要な燃料である石炭を運搬しています。これまで石炭の配船計画は担当者が頭を悩ませながら作成していましたが、船の動静や発電所の石炭消費量など日々変動する様々な条件を考慮しなければならず、最適解を導き出すのが困難だったといいます。

そこで北陸電力では、2024年11月からALGO ARTISのAIによる配船計画最適化システムを導入し、複雑な配船計画の作成業務の効率化と、より経済的な燃料調達の実現に向けた取り組みを開始しました。導入の経緯や導入後の変化、今後の展望について担当者に聞きました。

Interview

お客様の声
Interview

発電量の約4割を占める石炭の調達、配船計画の最適化は重要なミッション

北陸電力
[お話を伺った方]
北陸電力株式会社 エネルギー取引部 石炭・バイオマスチーム
(左) 統括課長 社浦里香様
(右) 配船計画ご担当 渡邊ひなの様
――北陸電力さんにおける「石炭の配船計画の作成業務」について教えていただけますか。
渡邊様
配船担当者の役割は、 敦賀・七尾大田(ななおおおた)・富山新港の3つの火力発電所に最適なタイミングで石炭を届けることです。どの船をどのように配船すれば、経済性を考慮しながら安定して石炭を調達できるのか。石炭は主にオーストラリア、インドネシア、北米などから輸入しているため、国内外の石炭会社や商社、船会社といった取引先と連携し、様々な条件を考慮しながら配船計画を作成しています。
社浦様
当社では石炭火力が発電量の約4割を占めているため、電力の安定供給を実現する上で石炭の配船計画を最適化することは重要なミッションです。石炭は年間で約80隻の船を配船し、海外から調達しています。石炭の燃料費は、当社の中で1番大きな費用項目にもなっているので、このコストをスリム化することは経営においてもインパクトのあるテーマなのです。
――実際に配船計画を作成する上でどのあたりに苦労や難しさを感じられていますか。
渡邊様
他の燃料と比較して石炭の調達量が多いからこそ、様々な指標や制約条件を考慮しなければならない点です。事前にわかっている前提条件は計画を立てる段階で勘案できますが、実際には天候や市況、船の動静、発電所の運転状況など毎日変化するものも多く、イレギュラーな事象も頻繁に発生します。

様々な関係者の意向や契約条件を踏まえた上で、最適な受け入れ体制を調整していく必要があるだけでなく、予想外のことが起こった際の対応力やリスクの予測力も求められるのはこの業務の難しいところだと感じています。
北陸電力
――「考慮するべき変数が多い」という点がこの業務を難しくしている要因になっているのですね。
社浦様
変数が多い上に、「その変数が常に変動している」点が難易度の高さにつながっています。ある一定のタイミングで変数がすべて固定化されていれば、簡単ではないものの、それに基づく最適解を導き出すことはできるはずです。でも船の動静や発電所の石炭消費量を筆頭に様々な変数が毎日のように動くため、その時々における最適解に辿り着くのは人間の頭だけでは難しい。それ故に熟練者の経験や勘といった定量化されにくい要素も多く、担当者によって成果物が変わりやすい側面があるのだと考えています。

複雑な条件が絡む配船計画の最適化は“十数年にわたる”会社の悩み事だった

――そのような難易度の高い計画作成業務について、これまではどのように取り組まれていたのでしょうか。
社浦様
社内に「配船パソコン」と呼んでいるスタンドアローン※の業務用パソコンがあり、それを用いて担当者が手作業で計画を立てていました。


配船パソコン内の業務システムには自社で保有している船の次回以降の航海スケジュールを計算するなど簡易的な機能は備わっていますが、「どの船をどのように配船するのが最適か」をシミュレーションできる仕組みはありません。そのため船会社との契約条件と照らし合わせながら、担当者がゼロから配船計画を作っていく必要がありました。
※ネットワークや他の機器に接続せず、単独で動作している状態
――配船計画の作成にあたって、いくつか課題を抱えられていたと伺っています。
渡邊様
大きく3つの課題がありました。1つ目は「コストの考慮が十分にできていなかった」こと。2つ目は「計画作成業務に多くの時間を要していた」こと。3つ目は「属人化した計画になっていた」ことです。
【導入前の主な課題】
1.コストの考慮が十分にできていなかった
2.計画作成業務に多くの時間を要していた
3.属人化した計画になっていた

どうしても限られた選択肢の中から「契約を確実に履行するための配船計画」を選んでいたため、その計画が「コストの観点でも最適なのか」までは十分に吟味できていませんでした。また担当者が毎回頭の中で考えながら計画を作っていたため、時間がかかっていただけでなく、知識量や経験値によって計画の質にもバラつきが生じていたのです。
社浦様
積地と揚地と船の組み合わせは無数に存在するので、それらを一つひとつ検証しながらコスト最適な計画を検討するというのは現実的ではありません。実際には遠いところは安い船、近いところは高い船など基本となる考え方に基づいて計画を立てていたのですが、その考え方が本当に最適なのかどうかも確証はありませんでした。

また、毎回全ての運賃表を見ながら綿密に計算をするとなると時間がいくらあっても足りないので、コストが高い安いといった基準も大まかな分類しかなく、その中から「1番経済的だと思われる選択肢」を選んでいたというのが実情です。
――そのような状況の中で配船計画最適化システム「Optium」の導入を決められた経緯を教えてください。
社浦様
他の電力会社と石炭輸送における配船計画のDXに取り組まれている実績があったことが1つのきっかけです。私が今の部署に異動したタイミングでは既に導入が決まり運用準備のフェーズでしたが、既に導入実績があり、事前協議を通じて業務効率化を中心に一定の効果を期待できると判断できたため、Optiumの導入を決断したと当時の担当者からは聞いています。

私自身、十数年前に配船担当をしていた際に同じような課題感を持っていましたが、当時は計画の最適化を実行できるようなツールは見当たりませんでした。当社における長年の課題を解決できるかもしれない選択肢が現れたということで、ALGO ARTISとの取り組みへの関心が高まったのだと認識しています。
安定在庫を保ちつつ経済性を考慮した配船計画を作成

単純作業がなくなり「配船計画をより良くすること」に時間を使えるように

――2024年11月の運用開始から約4カ月が経ちました。導入後の変化についてお聞かせください。
渡邊様
年間の配船計画を作成するにあたり、AIが「叩き台となる草案」を作ってくれるようになりました。従来は担当者が自分の頭の中で80隻の船を振り分ける必要がありましたが、Optiumでは前提条件を入力すると計画の土台が自動で作成されます。担当者が土台を作るところから始めなければならなかったところに、ゼロベースで計画を作ってくれる同僚が1人加わったような感覚です。

業務効率化の観点では、システムの操作感や使い勝手が良くなったことで、1週間に数時間発生していた単純作業がほとんどなくなりました。例えば以前は、主に担当者のみが配船パソコンを操作していたため、計画を上司や発電所の担当者に共有する際には紙に印刷して配ったり、PDFで出力したデータをメールで送付していたりしたのです。

現在はOptiumのアカウントを保有している関係者が各々のパソコンから好きなタイミングで最新の計画にアクセスできるようになり、情報を共有するためだけに発生していた業務が不要になりました。これまでは計画を立てて実行することで一杯一杯だったのですが、AIが土台を作ってくれるようになったことに加え、単純作業も減ったことで「配船計画をより良くすること」にさらに多くの時間を費やせるようになったのが1番のメリットだと感じています。
社浦様
策定された計画に対してフィードバックをする立場としても、複数の配船計画をシミュレーションしながら、最適な選択肢を議論できるようになりました。

以前は少し条件を変えた別案を作るだけでも担当者の負担が大きかったので、検討できる選択肢の数が限られていたのです。Optiumの場合は人手をかけることなく複数のパターンを作成できるので、「試しにこの条件を変えてみたらどうなるか」といったシミュレーションがしやすい。自分自身で別パターンを作ってみた上で渡邊にアドバイスをすることもできるようになりました。
――導入前の課題の1つに「配船業務の属人化」を挙げられていました。この点はいかがでしょうか。
渡邊様
実は私が配船担当になったのは2024年度からなんです。システムに対する最低限の理解や石炭の配船計画に関する基礎的な知識は必要ですが、私のように経験が浅い担当者でも業務に取り組みやすくなったという意味で、以前に比べて業務のハードルが下がったのではないかと感じています。
――今後Optiumを活用していく中で期待されている効果があれば教えてください。
社浦様
感覚値ではありますが、担当者の労働時間の削減についてはすでに効果が現れてきているように感じます。細かな定量化はこれからですが、石炭調達コストの削減や属人化の解消などとともに、さらなる効果を期待しています。

当社では「北陸電力DX戦略」を掲げ、AIのような先端技術を活用した業務の高度化や生産性の向上に取り組んでいる真っ只中です。Optiumの活用はこの戦略を推進していく上で、大きく貢献してくれるものだと考えています。
北陸電力

AIは、人の価値を引き出すもの。ノウハウ継承の新たな形をパートナーとともに築く

――AIソリューションを導入することで、ノウハウ継承はどのように変化すると思いますか。
社浦様
AIを活用する一方で、無条件にAIを信じきってしまう、完全にAI任せになってしまう状態は私たちが1番恐れていることでもあるんです。この仕事には必ずしもシステムには反映できない人間の経験や第六感が活きる部分があると感じています。だからこそ、そのノウハウは失わないようにしなければならない。AIの力で明らかに業務が楽になっている点がたくさんあるので、AIを活用した方が良い部分と、人間がきちんと対応する必要がある部分を明確にして、次の世代へと引き継いでいくことが大切だと思っています。
――本日はありがとうございました。最後に、同じく配船計画の立案で苦労している方へ、メッセージをいただけますか。
渡邊様
配船計画は様々な条件を鑑みながら作成することが求められるため、やりがいを感じられる業務である反面、経験の浅い担当者であればあるほど難しさを感じる場面も多いと思います。これまで社内の経験者や上司に相談しながら業務を進めてきましたが、社外にも手厚くサポートしていただける存在ができたのは一担当者として心強いです。計画立案に難しさを感じていらっしゃる場合には、AIの活用も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
資料提供:北陸電力株式会社
※ページ上の内容は2025年3月時点の情報です。

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