導入事例 木材チップ船の輸送計画最適化
配船作業時間は約3分の1に。
年間数億円のコスト削減を見込む。
配船作業時間は約3分の1に。
年間数億円のコスト削減を見込む。
日本製紙株式会社​

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日本製紙株式会社

国内屈指の製紙メーカーである日本製紙では、紙やパルプといった製品を生産するための原材料である木材チップの約7割を海外から輸入しています。輸入先は世界各地にわたり、大型貨物船を10数隻使って輸送していますが、これまで配船計画を作成にするには、配船担当者が関係各所とやり取りした内容や、歴代担当者から長年継承されてきた経験則などを頼りに、手作業で一つひとつ組み立ててきました。しかしシステムの刷新に伴いALGO ARTISのAIによる配船計画最適化システムを導入することに。導入までの流れや実際に利用してみての感想や成果などを、担当者に聞きました。

Interview

お客様の声

世界各地の産地から10数隻の専用船を使い、国内5箇所の港に木材チップを届ける

[お話を伺った方]
日本製紙株式会社 原材料本部 林材部 調査役 宗円典久様
――まずは、日本製紙さんの配船計画について教えていただけますか。
弊社では紙やパルプ製品の原料となる木材チップの約7割を、アジア、ブラジル、アフリカ、オーストリアといった世界各地から、国内5箇所の工場に併設された港に運んでいます。

大型貨物船による海上輸送が基本であり、複数の海運会社と契約している10数隻の専用船を使って、どこの産地のどのような原料をどのくらい載せ、日本のどの港にいつ届けるのか。そのような計画を策定しています。
――配船計画を策定する上での苦労や難しさはどのあたりでしょう。
さまざまな制約条件や考慮すべき指標があることです。具体的には、輸入先の国によって生産される木材チップの種類は異なりますが、木材チップは木を伐採して加工する手間もありますから、必要なタイミングで必要な量がすぐに準備できるわけでもありませんが、木材チップを積み込む港によっては、船舶の大きさ制限により入港できないケースもあるため、最適な船舶と港の組み合わせを選ぶ必要があります。

一方、船舶を受け入れる国内工場においては、木材チップはヤードに保管していますが、在庫を切らすことなく、また多すぎることもなく、適正な在庫量をキープすることが求められます。
――制約条件を聞いただけでも、配船計画の作成ならびに最適化が大変な業務であることが窺えます。
その他、輸送コストをできるだけ抑えるために、航海の距離や船の速度、船のチャーター代、燃料費、滞船料などの指標を考慮しながら最適な配船計画にする必要があります。加えて昨今はGHG(Green House Gas)の排出量も重要なファクターです。

事前のアセスメントで明確な成果が確認できたことが導入の決め手

――このような難しい業務を、これまではどのように行っていたのですか。
基本、1人の担当者が担ってきました。配慮すべき制約や要素が数多くあること。それらが密接につながっており、すべての情報が担当者に集約されている必要があるとの考えからです。

まずは、年間の大枠の計画を策定します。しかし、工場の生産計画が変更されたり、気象などの要因で船舶のスケジュールが変わるなど、適宜、条件や要素は変化します。そのため、おおむね週に一度の頻度で見直しています。

配船計画を見直す、手を加えるということは、連続する他の配船計画や全体の計画も変わる場合が大半です。当然、変更時には該当する各ステークホルダーが対応可能なのかどうかを確認する。その上で、調整作業も生じます。
――単に目先のトラブルに対応するだけの業務ではない、ということですね。ところでITシステムなどは活用していなかったのですか?
もちろん使っていました。ただ1990年代につくられたいわゆるレガシーシステムのため、便利ではありましたが、入力できる要素が船の速度、積荷の数量などに限られていて、コストを計算するような機能はありませんでした。

ベンダーのサポートも終わっていたため、昨今の状況に見合った仕様に改修したいと思っても、できない状態でもありました。そこで新しいシステムを導入しようと調べていくと、AIを活用したシステムがよいと知り、いくつか検討を重ねました。
――複数のAIシステムの中から、ALGO ARTISに決めた理由はどのあたりだったのでしょう。
AIの技術力の高さ、導入実績が決め手でしたね。契約、即導入といった流れではなく、まずはお試し的に、成果が出るのかどうかアセスメントを行ってくれることも高評価でした。実際、アセスメントで成果が出ることが分かったのが、最終的な導入の決め手でもありましたから。

というのも、先ほど紹介したとおり配船計画の立案は私が基本一人で行っています。そのため業務効率化という成果だけでは、会社内でシステムの導入を認めてもらうことは難しかったからです。輸送コストやGHGの削減といった、より強いインパクトが求められました。

そして実際、導入前の効果検証において、輸送コストでは年間約数億円を。GHGの排出量は約3%削減できる、との結果が得られました。

属人化していたノウハウをAIが数値化、継承もスムーズに

――導入後の成果について、改めて聞かせてください。


先述した輸送コストやGHGの削減といった実計画における実績値は、導入してからまだ日が浅いため今まさに計算中です。一方で、私が配船計画に充てる業務時間は確実に減ったと感じています。

数値化してみたところ、これまで年間約660時間であったのが3分の1の約220時間にまで減少することが分かりました。これまでは先の計画まで含めて一つひとつ手作業で入力していたのですが、AIシステムを導入したことにより、手による作業時間が大幅に軽減されたのが大きな要因だと捉えています。

もうひとつ、これまでは私が策定した計画や適宜修正した判断や内容が果たして最適であったのかどうか、正直、自分を含めて誰にも判断ができない状況でした。そのためより良い配船パターンを追求するとある意味エンドレス、キリがない業務でもありました。


しかし新しいシステムでは「AIが演算した中で最適な解」との明確なエビデンスがあるため、余計に悩むようなことはなくなりました。ステークホルダーにもより説明しやすくなりましたし、納得感も増したように感じています。

私が過去の担当者から継承してきたいわゆる暗黙知的なノウハウが、今回のAIシステムの導入により、数値・データ化されたことも大きいと考えています。

会社によって異なるとは思いますが、弊社の担当部署の場合は2~3年でジョブローテーションする環境です。そのため都度、暗黙知やノウハウを承継する必要がこれまではあり、新任者が前任者の業務をOJTで半年ほどかけて、身につけていました。

しかし今回AIシステムを導入したことで、このような暗黙知的なノウハウが数値・明確化すると同時に、システムに蓄積されることにもなりました。

その結果、新任者に限らず配船計画はある意味誰でも、ボタンを1つ押せばできるようになりました。正確にはもう少し調整が必要ですが、おそらくこの先はそのような簡便なシステムにさらに進化すると期待しています。

また余談ですが、AIという最先端技術を導入したことで、社内からはもちろんメディアから取材を受けるなど、注目されるようにもなりましたね。
――本日はありがとうございました。最後に、同じく配船計画の立案で苦労している方へ、メッセージをいただけますか。

AIシステムを導入して一番よかったと思うのは、トラブル対応時です。先ほど紹介したように、一箇所変更すると必然的に全体の計画を見直す必要があります。トラブル時は特に素早い判断が求められる中で、ひとまず成り立つ計画が1パターン出来上がると、そこからできるだけ手を加えたくない、他のパターンを考える余裕がない、というのが本音でした。

しかしAIシステムを使えば、目先の変更は私が行ったとしても、その先の大枠の全体計画の修正と最適化を自動で行ってくれます。複数シナリオが考えられる場合も、条件を再入力すれば新たな配船計画をいくつも提案してくれるので、比較検討を素早く行えます。そのため私は、目の前のトラブル対応に注力できるようになりました。

もうひとつ、ALGO ARTISさんのサービスがよいと感じた点は、既存の業務フローをなるべく踏襲するシステムを構築してくれたことです。具体的には、従来のUIを充実させることで、手作業による編集も快適に行えるようなフローとなりました。

このような配慮の結果、配船計画自体はAIが自動で作成してくれますが、最終的な決定や細かな編集は人、私が行うシステムとなりました。AIはあくまでサポート、性能の良いカーナビのような位置づけとして使うことができています。
資料提供 : 日本製紙株式会社
※ページ上の内容は2024年3月時点の情報です。

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